ーー 週間予報が雨マークで埋まりがちな今日この頃。誰もが梅雨の始まりを感じている。そんな中、この男はただ一人、さらにその先、梅雨明け後に訪れるであろう猛暑との闘いの日々を見据えていたのだった... ーー
夏といえば納涼、納涼といえばホラー。というわけで、少し早いが私が個人的におススメするホラー作品を紹介しようと思う。
突然だけど、あなたはホラー作品と聞いてどんなイメージを覚えるだろうか。
幽霊、呪い、流血、殺人鬼。人それぞれ、ホラーに対して持つイメージは違うだろう。
これからいくつかの作品をお勧めするにあたって、私の考える(というか好みの)ホラー作品へのイメージを明示しておこうと思う。(どうでもいいって人は作品紹介まで飛ばしてください)
私が思うに、ホラーとはズバリ、「踏み込んではいけない」ということ。
もっと詳しく言うと、「これ以上見たり聞いたり、知ってはいけない気がする」という気持ちになる作品。これが私が思う「ホラー作品とは何ぞや」である。
この心理を使用したものの最たる例としてはは、怪談話などをする直前によく用いられる文言である、
「この話を聞いたあと、貴方の身に何が起こっても私は一才の責任を負いません」
などが挙げられる。要するに、「今からする話は、知ってしまうとまずいですよ」とあらかじめ宣言することで、そのあとする怪談に説得力(あるいは権威)を持たせているのだ。
回りくどくなったが、まとめると私にとってのホラーとは「踏み込んではいけない」という一言。これに尽きる。
とにかく、以上の理由から、私はホラー作品には流血要素やグロシーンは一切必要ないと考える(流血要素や殺人要素は知ってはいけないような内容ではない。コ○ンとかでは日常茶飯事時だし)。それらの描写がメインの作品は、ホラーというよりむしろパニックもの、あるいはサスペンスである、というスタンスを取っている。
さて、私の中のホラー観を吐き出したところで、本題のホラー作品紹介に入りたい。
先に言っておくが、これから紹介する作品は、どれも「踏み込んではいけない」系の作品ばかりである。
幽霊やバケモノから逃げ回る、あるいはそれと対決するみたいな話を求めている人の期待には応えられないだろう。ご容赦ください。
それでは、1作目から。
1&2作品目 「SCP-511-jp けりよ」 「Tale しんに」 (作:梨)
いきなり2作品の同時紹介となったがお許しいただきたい。
最初にご紹介するのは「SCP-511-jp けりよ」と「Tale しんに」だ。
作者は梨さんという方。ネットを中心に活躍しているホラー作家さんであり、SCP財団やオモコロなど様々なメディアにホラー作品を多数掲載、寄稿している。
これら2つの作品は私がホラー作品(特に民俗ホラー、ジャパニーズホラー)にドハマりするきっかけとなった作品である。
作品のあらすじをざっくりまとめると、九州地方のとある山奥の廃屋にて見つかったビデオテープの謎に迫っていく、という内容である。
初めてこの作品に出合った時、「背筋が凍る」とはまさにこのことかと思い知らされた。
この作品には「得体のしれない恐怖」という言葉がふさわしい。
「全貌はわからない。でもこれ以上知るとまずい気がする。」
冷や汗をかきながら、それでも読み進める手が止まらず、結果激しく後悔したことを覚えている。
この作品は民俗学的な背景の強い作品でもあるので、文章のみだと理解が難しい可能性がある。
そこで、今回はあえて本記事ではなく、「けりよ」および「しんに」の解説動画を紹介したいと思う。
本記事の良さ、恐ろしさを最大限引き出した動画であるため、興味のある方は下のリンクから視聴してみてほしい。
本記事はこちら
SCP-511-jp けりよ
Tale しんに
3作品目 みさき (作者不明)
先に行っておくと、この作品は今回紹介する作品の中でダントツ一番に怖い。
また、この作品は名言すらされていないものの、山梨県キャンプ場女児失踪事件がモチーフになっている言われている。
あらすじとしては、ある日見晴らしのよい神社境内で女児が忽然と姿を消してしまった事件の真相に迫るというものである。
事件現場に関する資料や、関係者の会話記録など、さまざまな手がかりを追いながら事件の真相に迫っていく。いわゆるドキュメンタリーホラーというやつである。
ここまで聞くと単なるミステリー作品のように思えるかもしれないが、読んでる最中は常に得体の知れない不安に襲われる上に、これ以上迫ってはならないという予感が常につきまとう。
私の拙い語彙では、この作品の持つ突出した不気味さをうまく伝えられない。
気になった方は是非作品を読んでみてほしい。
読む方法は2種類ある。(有料と無料の2種類)
1つ目amazonの電子書籍で購入する方法。忌録: document Xというホラー短編集に収録されている。
なお、2022年5月時点では、amazon prime会員であれば無料で読めるようだ。
それと、買う前に絶対にレビューを読まないこと。ネタバレ、考察コメントが多めである。要注意。
購入はこちらから
2つ目の方法はwebページで本記事を読む方法だ。そもそもこの作品は、元はと言えばとある文学コンテストの優秀賞作品であり、誰でも無料でweb上から全文を読むことができる。
リンクはこちら
優秀作品賞 - 第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦
おすすめはやはり忌録: document Xで読む方法。忌録: document X版では、web版に比べて加筆、修正がされているため怖さが1.5倍増しになっている。
とにかく、私の中ではダントツNo.1ホラー作品なので、是非読んでいただきたい。
4作品目 異端の祝祭 (作:芦花公園)
次にご紹介するのは、芦花公園さん作「異端の祝祭」だ。
この作品は、ジャンルで言うと「カルトホラー」に分類される作品である。怪しげな新興宗教団体に取り込まれた女性をめぐるお話であり、途中途中に出てくる謎の儀式のシーンでは、描写があまりにリアルであるため、今まさに禁忌に触れているような感覚に陥いること間違いなし。
映画ミッドサマーのように、我々とは異なる倫理で生きている集団に囲まれる形のホラーが好きな方はぜひおすすめしたい一作である。
5作品目 火のないところに煙は (作:芦沢 央)
最後にお勧めするのは、芦沢 央さん作、「火のないところに煙は」だ。
この作品は、今日おススメした5つの作品の中では一番スタンダード、もっと言えば万人になじみのある恐怖を提供してくれる。
テイストとしては、テレビ特番の「本当にあった怖い話」や「世にも奇妙な物語」に近いので、ホラーをあまり読んだことのない人にとっては、最初の一冊としてもお勧めできる。
また、本は短いお話を数話まとめた短編集なので、普段本をあまり読まないという人も気楽に読むことができるというのも魅力的だ。
実はこの本には、上に挙げた4作品とは一味違う仕掛けが隠されているのだが、それを言ってしまうと楽しみがそがれてしまうと思うので、紹介はこの辺で終えておこうと思う。
まとめ
いかがだっただろうか。上で紹介した作品の中には無料で読めるものも多くあるため、とりあえず無料の気になった作品から読んでみるといいと思う。
今日はここまで。
※これらの作品を読んで、あなたの身に何が起ころうとも、本記事著者は一切の責任を負いかねます。
なんてね。