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【小話】 なぜアメリカの教科書は分厚いのか

学会受賞者への記念品の発送準備中、指導教員との会話にて。

 

 

私「とりあえず梱包終わりましたね。それにしても、景品に光エレクトロニクスの専門書、しかも全員もれなく洋書だなんて、さすが国際学会って感じですね」

 

 

教員「そうだね。ちなみに受賞者に海外の専門書を送るってのは議長のアイデアなんだ。今年の議長はかなりトガった人で、いま梱包した専門書はどれもニッチなジャンルばかりだったよ。光学会の景品なのに脳科学の本とか入ってたし。」

 

 

私「マジですか。内容が専門外かつこの分厚さって... それにしても海外の教科書ってて厚めの本が多いですよね。この前ゼミ用に買った本もすごい厚さだったし。」

 

 

教員「確かに分厚く感じるかもしれないね。でも我々研究者からしてみると、『海外の教科書が厚い』というよりも、『日本の教科書が薄い』という見方が強いかな」

 

 

私「えっ、まさか海外の教科書の厚さがスタンダードなんですか?」

 

 

教員「僕はそうだと思うよ。そもそも教科書って何をするための本だと思う?」

 

 

私「勉強するためですか?」

 

 

教員「そう、勉強するため。だから教科書、とくに君たち学生が大学で使うような初学者向けの本というのは、なるべく基本的の事項の解説などに多くのページを割かなければならないはずなんだ。だから海外の教科書はどうしても分厚くなってしまう。」

 

 

私「なるほど。でもそれならなんで日本の教科書は薄いんですか?」

 

教員「結論から言うと、『出版社があえてページ数を抑えている』から。これは教科書を多く売るための工夫なんだ。」

 

私「どうしてページ数を減らしたら売り上げが伸びるんですか?」

 

 

教員「それはすごく簡単で、『定価を低く抑えたいから』だね。例えば君たちが持っている電磁気の教科書って、誰に最も多く買われていると思う?」

 

 

私「大学生じゃないですか?」

 

 

教員「そうだね。そして君たち学生が普段買っている教科書の大半は1000~2500円程度。たまに3000円以上する教科書を授業で指定されたりするとげんなりするでしょ?」

 

 

私「しますね。なんならその授業を取るかどうかすら悩むレベルです。」

 

 

教員「そう、つまり大学生に教科書を買ってもらうには、ある程度手ごろな価格に抑える必要があるんだ。高校までに使う教科書はすべて学校指定のものを買うから、価格はあまり売り上げに影響しないかもしれないけれど、大学で使う教科書は価格が売り上げに直結するからね。」

 

 

私「なるほど、確かにしっくりきます。でも定価を抑えるために分かりやすさを犠牲にしてしまうなんて、少しもったいない気もしますね。」

 

 

教員「まあ、出版社も仕事でやってるから、仕方がないかもしれないけれどね。それに、薄くても内容がしっかりしていて、初学者にもお勧めできるような本だって探せば結構あるし。」

 

 

私「ちなみに、内容がしっかりしている教科書を見つけるコツとかってあるんですか?」

 

 

教員「うーん。私の場合は英語で書かれた教科書を見ることが多いかな。日本のものより細かく記述されてることが多いから。英語が苦手な学生におすすめなのは、『海外の有名な教科書の日本語訳されたものを使う』ってことかな。さっきも言ったように、海外の教科書は分厚いし高いけれど、その分解説が充実していて、途中で挫折することが少ないと思うよ。」

 

 

私「なるほど、さっそく本屋行って探してきます」

 

 

教員「その前にLabviewの使い方だけレクチャーしたいんだけど、この後平気?」

 

 

私「アッ、ハイ...」

 

 

その後3時間半にわたるレクチャーが始まったのだった...(昼食食べ損ねた)

 

 

 

というわけで、アメリカの教科書は分厚いというより、日本の教科書薄すぎ!という話でした。

 

 

今日はここまで。